宝蔵院流槍術
槍柄用材の樫植樹募金

毎年秋開催の「宝蔵院流槍術興福寺奉納演武会」
 近年の古武道各流派における共通する課題として、昔ながらの武具の確保が大きな課題となっています。
 特に私共のように、長尺・無節の樫製稽古槍を使用する宝蔵院流槍術にとって、その調達は困難を極めております。国内で長尺・無節の樫材は既に枯渇してしまっているのです。
 この難局を乗り切るため、当流派では自身で山林を購入し、伝習者の手により槍柄用材の樫を植樹・育樹する計画に着手いたしました。
 50年以上に亙る世代を跨ぐ一大プロジェクトではありますが、私どもは460年余受け継がれてきた槍術文化を絶やすことなく次世代に伝承し続けるため、敢えてこの難題に立ち向かう所存です。
 植樹・育樹作業は奈良県森林技術センターと長期にわたる生育管理指導協定を締結し、専門家による知見とご指導を得つつ、伝習者達によって弛まぬ下草刈り・枝払い作業を継続してまいります。
 平成26年12月の奈良県北葛城郡上牧町における植樹祭挙行し、さらに継続して募金活動を受け付けております。
 伝統文化を守るため山林購入・樫苗植樹を計画実行し、募金活動を実施する宝蔵院流槍術の取り組みをより多くの皆様にご支援を賜りますようお願いします。
<計画概要>
1.実施主体     奈良宝蔵院流槍術保存会 
              (会長:花山院弘匡 春日大社宮司)

2.植樹地        奈良県北葛城郡上牧町 (山林:約2,500u)
               *周囲が市街地化しており、鹿・猪が不在

3. 生育管理指導協定 
           奈良県森林技術センターとの生育指導管理協定(H.26.12.1)
           Facebook協定書締結

4.植樹祭       平成28年12月10日(土)開催
              Facebook植樹祭
              Facebook植樹祭記念演武会

5. 植樹        平成29年2月25日
              Facebook植樹

6.募金目標金額  200万円:山林取得、雑木伐採・処分、進入・搬出路の設置

7.協賛金      個人様 一口: 5,000円
             企業様 一口:10,000円

8.納金方法  植樹祭(H.26.12.10)植樹(H27.2.25)は終了しましたが、
          さらに植樹及び育樹活動を拡大継続してまいります。
          募金は随時受け付けています。
          多くの皆様のご支援をどうぞよろしくお願いします。
                          
          *メールにて「ご住所・ご氏名」をお知らせください。
           「趣意書」「振込用紙」お届けさせていただきます。
           TEL・FAX.0742-44-9124
           郵便振込用紙にてお納めください。
           *振込手数料は不要です。
            郵便振替口座 00920-4-185560
            (奈良宝蔵院流槍術保存会)

9.納金期日    随時受付

10.樫植樹募金ご協賛者様


宝蔵院流槍術の稽古槍 
左:鎌槍(かまやり)2.7m ・右:素槍(すやり)3.6m

宝蔵院流槍術
 宝蔵院流槍術は柳生新陰流兵法と共に奈良が発祥の日本を代表する古武道です。
 その流祖・胤栄(いんえい:1521-1607)は興福寺の僧。武芸を好み、槍の修練に努め、ついに鎌槍(かまやり)を工夫し、宝蔵院流槍術を創めました。
 宝蔵院流槍術の槍は鎌槍と称する十文字形の穂先に特徴があります。この鎌槍は攻撃と防御に優れて全国を風靡し、日本を代表する最大の槍術流派として発展しました。
 現在では本拠地・奈良を中心に約100名の伝習者が日本国内各地とドイツの各道場において稽古に励んでいます。

世界一の葉長樫
樹高40m・根回り9.6m
福瀬神社(宮崎県日向市)
槍柄用樫の植樹
 この難問を解決するには、自分達自身で樫を植え育て槍柄材を調達する以外に方法がありません。
 私共は平成25年より毎年、槍柄に適した樫(葉長樫:ハナガガシ)のドングリを宮崎・大分県において採集し、奈良において播種・育樹、既に苗木は40-50pと植樹出来るまでに成長してまいりました。
 いよいよ山林を確保し、今年末には植樹祭を挙行し、今後も継続して播種・育苗し順次植林を進めてまいる所存です。この樫は槍柄に必要な堅さと弾力性を有し、真っ直ぐ30m以上に生長します。50年後には槍柄用材の大樫森が見られる筈です。
 植林は30〜50年以上にわたる息の長い事業であり、奈良県森林技術センターと長期にわたる生育管理指導契約を締結し、専門家による知見とご指導を得つつ、伝習者達によって弛まぬ下草刈り・枝払い作業を継続してまいる所存です。

植樹を待つ「樫苗」
樫の根は苗丈の倍の長さに真っ直ぐに伸びます。
このため、50-60cmの竹筒ポットで育てています。
植樹募金
 日本古来の古武道の伝統文化を守るため、槍柄用樫の植樹事業に対し、皆様方の幅広いご賛同とご協賛を賜りますようお願いします。


参考資料
「島根のすさみ」 佐渡奉行在勤日記
川路聖謨(かわじ としあきら
元 奈良奉行1846-1851)

川路聖謨(かわじ としあきら)
天保十一(1840)年十月十日 風雨
 今日は武術の一覧也。書院の畳をあげ候得ば、直に稽古場になる也。七間に三間の板間にて、よき稽古場也。
 くり出しは目付也。某が右の横に組頭、入側(いりがわ)に用人・給人・刀もち着坐也。左次(ひだりつぎ)の間に、広間役一同着坐。鑓は宝蔵院(伊能先生[伊能一雲斎]の門人、高山又蔵[高山貞利・佐渡奉行支配組頭]の弟子共也)、左分利流・無敵流也(是は素鑓同士也)。剣術は無眼流・東軍流・新陰流(中野楽山先生[中野金四郎]などの同流名なれ共、大いに異る也)、居合無敵流、杖術吉岡流、柔術渋川流・心流也。いずれも形一通り畢て、東軍流・新陰流目録・免許のもの、仕合いたす。
 宝蔵院は入身(いりみ)[素手で向かう]いたす。東軍流・新陰流、いずれも花法[型]也。罷出で候面々へ、強飯(こわめし)・煮しめ等遣わす。いずれも先例也。人数七十弐人あり。
五時[午前八時]揃にて、七半時[午後五時]頃まで相懸り候。新陰流に猿飛の太刀あり。武備志にいう所のものに似たり。某が以前皆伝受けし新陰流に、燕飛の太刀あり。似たるがごとし。

天保十一(1840)年十一月二日 晴
 昨日、嘉十郎と槍を遣い、組合い候処、槍の上へ互いにころびて、槍折れ候いぬ。
 よって、ここのかしの柄を取寄せみるに、おさおさ天草[天草かし、肥後国天草特産白樫・槍柄に好適]のごとし。かしは海辺によろしきかもしらず。

「官山物語」  
福連木里づくり振興会ホームページより
(熊本県天草市天草町)

昔の角山から木を搬出する風景写真(きんま)
 福連木(ふくれぎ)国有林のことを「官山(かんざん)」と呼ぶ。
 私たちの遠い先祖たちが、「官山」と呼ぶようになったのは徳川の初期からである。棒術なるものが興り、やがて槍術が生まれた戦国の世も治まった頃、大阪武士の間でこの山の"樫"が槍の柄に使われていた。
 ある時、四天王寺に火事が起こり、現場に駆けつけた一人の武士が持つ槍の柄の優れていたことが評判となり、それが将軍家の知るところとなったためといわれている。
 万治元年、(1658年)徳川4代将軍家綱の頃から、安政5年(1858年)徳川家定まで200年という長い年月、樫の木は幕府納めとなった。槍の柄となる樫は「ハナガガシ」が最良とされていた。
 伐採された木はそれぞれの長さに切られ、下田へ運ばれ、一週間塩漬けにされ、筵(むしろ)に包まれ、海路大阪へ送られたと伝えられる。この間、警護は厳重で沿道の住民が土下座させられたのは言うまでもない。
 この官山がいっせいに新緑の芽を吹く初夏の眺望は、見る人の目を欺くばかりの景観となり、文人墨客の畏敬の的となった。
(天草町郷土史より抜粋)

稽古槍柄用材 葉長樫育成・植樹・募金の歴史

2018.11.25  槍柄用材葉長樫ドングリ採集
2018.11.17  槍柄用材 樫植樹苗木ウサギ被害防除網設置作業
2017.10. 2   槍柄用材 樫苗生育状況調査
2017. 4.26   槍柄用材 樫苗生育状況調査
2017. 2.25  樫苗植樹540本
2017. 2.20  樫苗植樹準備作業
2017. 1. 1   月刊「武道」2017.1月号掲載「宝蔵院流槍術 槍柄用材樫の木植樹祭を挙行」
2016.12.21  奈良県森林技術センター「ハナガガシ育苗の経緯」
2016.12.15  宝蔵院流槍術 槍柄用材の樫植樹募金 ご協賛者名

2016.12.10  槍柄用材樫植樹祭・記念演武会

2016.12. 5  樫苗生育状況調査
2016.12. 1  奈良県森林技術センター「宝蔵院流槍術と『成育管理指導協定』締結」
2016.12. 1  樫苗育樹「生育管理指導協定」締結
2016.11.24  奈良県森林技術センター報道資料「宝蔵院流槍術の樫苗植樹活動における成育管理指導協定書の締結について」
2016.11.20  稽古槍柄用材:葉長樫(ハナガガシ)ドングリ採集
2016. 9.18  宝蔵院流槍術 槍柄用材の樫植樹募金
2015.11.22  稽古槍柄用材:葉長樫(ハナガガシ)ドングリ採集
2015. 3.28  葉長樫(ハナガガシ)ドングリ特製竹筒ポットへの播種作業
2014.11.24  稽古槍柄用材:葉長樫(ハナガガシ)ドングリ採集
2014. 6.24  葉長樫(ハナガガシ)ドングリ発芽特製竹筒ポットへの移植作業
2014. 2. 1  月刊「武道」掲載:50年後の伝習者に託す夢(ハナガガシ ドングリ採集)
2013.11.24  稽古槍柄用材:葉長樫(ハナガガシ)ドングリ採集





報道
2017. 1. 1 月刊「武道」掲載 宝蔵院流槍術 槍柄用材 樫の木植樹祭を挙行
2017. 2.25 槍柄用材 樫苗植樹540本  


古武道の継承へ植林
3.6mの槍良材求め
宝蔵院流槍術50年計画

平成28(2016)年9月23日(金)毎日新聞

自宅前で長さ3・6メートルの槍を構える一箭順三さん。
槍を作るためには樫の良材が必要だ=奈良市で
 古武道「宝蔵院流槍術(そうじゅつ)」(本部・奈良市)は上牧町の山林で樫(かし)を育てる植樹事業に乗り出す。長さ最大3.6メートルの稽古(けいこ)に使う槍(やり)の用材が不足しているためで、第21世宗家の一箭(いちや)順三さん(67)=同市=は「木が育つには年月が必要だが、約460年続く武道を50年計画で守りたい」と話している。
【皆木成実】
 宝蔵院流は戦国時代、興福寺(奈良市)の子院・宝蔵院の僧胤栄(いんえい)が創始したとされる。奈良のほか、大阪、名古屋、ドイツに道場があり、約110人が学ぶ。
 稽古や演武には、いずれも樫製で先が十文字形になった鎌槍(長さ2.7メートル)と素槍(3.6メートル)を使う。いずれも特注品で、長く節のない樫の原木が必要。宝蔵院流は現在、愛知県の製材業者を通じて直接確保しているが、数年後には調達が難しくなることが予想されるという。また外国産の樫はしならないため、槍には向いていないという。
 同事業には県森林技術センターも協力。宝蔵院流が近く一般社団法人を設立して上牧町の林野約2500平方メートルを買収し、今年12月にまず50本を植林する。数年で400本程度に増やし、一箭さんの弟子らが下草刈りなどの手入れを行う。樫は30?50年で直径30〜40センチに育ち、1本で槍4、5本分の用材となる。
 宝蔵院流では、植林に伴う費用200万円の募金(10月末まで、個人1口5000円)を募っている。詳細はホームページにも掲載。問い合わせは一箭さん(0742・44・9124)。


槍の柄カシ 自前育成 
宝蔵院流保存会

平成28年(2016)年10月21日(金)読売新聞

ドングリから3年かけて育て、12月に植樹するカシの苗木
◇ドングリから苗 50年計画
 奈良で発祥した古武道・宝蔵院流槍術(そうじゅつ)で槍(やり)の柄に使用するカシ材の入手が難しくなり、同槍術の保存会(奈良市)が、カシの木を自前で育てる取り組みを始める。12月に苗木の植樹を行い、30〜50年後に伐採する長期計画。宗家の一箭(いちや)順三さんは「受け継がれてきた槍術文化を継承するため、難題に立ち向かう」と話している。
(岡田英也)

宝蔵院流槍術で用いるカシ材の槍=いずれも保存会提供

 宝蔵院流槍術の稽古や演武は、先が十文字形の鎌槍(長さ2・7メートル)と、先まで一直線の素槍(3・6メートル)が対戦する形式で行う。いずれの槍も、節がなく、真っすぐに成長したカシの木を使う。だが堅くて加工が難しいカシ材は需要が少ないため、育てている林業者はほとんどおらず、全国的に枯渇しているという。
 保存会では毎年、5〜10本の新しい槍が必要だが、約10年前から武道具店では入手困難になり、近年は愛知県内の製材所のみに頼っている。
 危機感を抱いた一箭さんは、2013年からカシの実(ドングリ)を九州で採取して門下生の庭にまき、苗木を育て始めた。3年かけて育てた苗木30本は、高さ40〜50センチまで成長。そこで上牧町に山林約2500平方メートルを用意し、12月に植樹することにした。
 今後も毎年植樹し、県森林技術センターの指導を受けながら手入れを続け、30〜50年先に伐採する。一箭さんは「柄の堅さや弾力などでカシが最も適しており、別の資材では代用できない。息の長い事業だが、成功させたい」と意気込んでいる。

保存会では200万円を目標に寄付を募っている。
個人一口5000円、企業一口1万円。
問い合わせは保存会(0742・44・9124)。
◆宝蔵院流槍術
 興福寺の子院だった宝蔵院の僧・胤栄が約460年前に創始した。十文字形の穂先を持つ鎌槍(かまやり)を使うのが特徴。剣豪・宮本武蔵は胤栄の弟子と対戦し、その技術に驚いたとの記録が残り、吉川英治の小説「宮本武蔵」にも登場する。江戸時代の最盛期には4000人の門弟を抱えたといい、現在も国内外の約100人が修行している。



「バガボンド」にも登場、伝統の槍術ピンチ
樫材が不足

合田禄、田中祐也
2016年11月2日 朝日新聞
 興福寺(奈良市)の僧が約450年前に始めた伝統の武術「宝蔵院流槍術(そうじゅつ)」の伝承が危ぶまれている。槍(やり)に使われる長尺の樫(かし)の確保が難しくなっているためだ。そこで槍術の保存会は自ら山林で樫を育てる取り組みを始めた。維持・管理などにかかる費用の寄付を募っている。
 10月下旬の奈良市中央武道場。「エーイ」「ヤー」。宝蔵院流高田派槍術を受け継ぐ数十人が稽古をしていた。槍の穂先が十文字の伝統の「鎌槍(かまやり)」(2・7メートル)を使う門下生は、相手が突いてくる、先までまっすぐな素槍(3・6メートル)を払ったり、たたき落としたりする。その度に、「パシン」と乾いた音が響く。
 宝蔵院流槍術は人気マンガ「バガボンド」(吉川英治原作、井上雄彦作)でも、剣豪・宮本武蔵が創始者・胤栄(いんえい)の弟子、胤舜(いんしゅん)と対戦する様子が描かれている。NHKの大河ドラマ「武蔵」にも登場した。
 いまも続く高田派は大阪、名古屋、東京、ドイツにも道場や稽古場があり、約100人が修行している。鎌は本来金属製だが、稽古や演武に使う槍は穂先も樫材を使う。樫はとても堅く、ウイスキーのたるやステッキなどにも使われる。ただ、稽古を重ねると折れたり、ひびが入ったりするので槍は年間計10本ほどが新たに必要だ。
 これまで武道具店から仕入れていたが、最近は「長く節のない樫材が手に入らない」と断られるように。何とか対応してくれる製材所を見つけて頼んでいるものの、将来はさらに難しくなる。「他の材は感触やしなり方が違うため、伝承してきた『型』が正確に伝わらない」と第二十一世宗家、一箭(いちや)順三さんは語る。
 そこで奈良宝蔵院流槍術保存会(会長・花山院弘匡春日大社宮司)は今年8月、樫を育てるための募金を始めた。奈良県上牧町の山林の一角(広さ約2500平方メートル)に、12月の植樹祭でまず10本を植える。
 すでに苗木を育てているが、槍として使えるまでは30〜50年。寄付は維持管理などの費用として使う。



伝統の「宝蔵院流槍術」に槍不足の危機!!
「10年くらい前から槍調達難しくなった」 
伝習者ら、植樹活動開始

平成29(2017)年1月12日(木)産経新聞
 奈良発祥の古武道「宝蔵院流槍術」。約460年の歴史を持つ由緒正しき武道だが、槍の柄の原料であるカシの不足が深刻化し、伝統の継承に黄色信号がともっている。槍に適する長尺で無節のカシを調達できるのはいまや愛知県の製材所1軒のみ。「自分たちで植林するしかない」。伝統を守るべく、槍術の伝習者が立ち上がった。

460年の伝統、国内外で約100人が鍛錬励む
 昨年12月10日、上牧町の山林ではカシの苗の植樹祭が行われていた。平成25年から毎年、ドングリから大切に育ててきた「ハナガカシ」の苗だ。約2500平方メートルの敷地に随時、計1500-2千本を植える予定で、30-50年後に伐採し槍の柄を製材するという長期計画を立てている。
 宝蔵院流槍術は約460年前に興福寺(奈良市)の僧、胤栄が始めたとされる奈良発祥の古武道。現在は奈良を中心に国内外で約100人が鍛錬に励む。特徴は、十文字の穂先が付いた「鎌槍」(長さ2・7メートル)。穂先まで真っすぐ伸びた素槍(同3・6メートル)と対戦する形式で、稽古や演武を行っている。
 これまで柄にはシラカシを使用。武道具屋に発注すればなんなく手に入っていたというが、宝蔵院流槍術21世宗家の一箭順三さん(68)=奈良市=は「カシが年々不足し、10年くらい前から槍を調達するのが難しくなった」と打ち明ける。

一流の槍材再興に向け、ハナガカシの自生する九州へ
 一箭さんによると、柄に適するのは繊維が真っすぐで、節のない長尺のカシ。カシが建材として利用されていた時代は日本全国にカシ林があったが、建材需要が減った影響で年々減少。今では愛知県の製材所1軒だけが槍の受注を請けてくれている状況だ。
 カシ以外の木も加工してみた。だが堅すぎてしならずに割れたり、握ったときの滑りが悪かったりと、うまくいかなかったという。
 「こんな槍で練習していたら、技術まで変わってしまう」。危機感を抱いた一箭さんたち伝習者は自らカシ林を育てることを決意。せっかくなら江戸時代に槍の一流ブランドとして名をはせた「ハナガカシ」を再興しようと決め、ドングリから育てるべく、平成25年11月、ハナガカシの自生する九州へと向かった。

育成に関する協定締結、50年の壮大な計画
 ハナガカシは真っすぐに伸びる性質があり、堅さと弾力性に優れるなど、槍の原料としては最適。だが、木の育成に関して一箭さんたちは素人。そこで県森林技術センターに相談し、アドバイスを受けながら毎年ドングリを植え続け、大切に育ててきた。
 そして昨年、ようやく植樹できるまでに苗が成長。シカの食害に遭わない山林を上牧町に見つけ、植樹祭に先立つ同12月1日、同センターとの間で正式に、ハナガカシ育成に関する協定を結んだ。今後50年にわたり、同センターが育成の助言、補助をするというものだ。
 同センターの伊藤貴文所長は「奈良にハナガカシは自生しておらず、私たちも育てた経験がない。試行錯誤しながら見守るしかない」としながらも、「歴史ある古武道を将来にわたって支えようという壮大なプロジェクト。関わることができてうれしく誇りに思う」と期待を込めた。


 奈良宝蔵院流槍術保存会では山林取得などにかかる費用約200万円を目標に募金を呼びかけている。
個人は1口5千円、企業法人は1口1万円。
申し込み、問い合わせは同保存会((電)0742・44・9124)。

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2017. 1.12 瀬戸の夕凪



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