第2回 宝蔵院流槍術「狸汁会」

第2回 宝蔵院流槍術「狸汁会」(たぬきじるえ)


開催日時  平成16(2004)年1月10日(土)
      12:00〜
      稽古始(10:00-12:00)後

会  場  奈良市中央武道場前 駐車場
      630-8113奈良市法蓮町1516
      TEL.0742-26-1060




稽古始の後、「狸汁会」を復活、
一般市民も舌鼓


宝蔵院流高田派槍術
第二十世宗家 鍵田忠兵衛

 宝蔵院流槍術は伝統の「狸汁会(たぬきじるえ)」を、1月10日の稽古始に併せ開催しました。
 宝蔵院流槍術は、約450年前、興福寺子院のひとつ宝蔵院の僧、覚禅房胤栄(かくぜんぼういんえい)が猿沢池に浮かぶ三日月を槍で突き、鎌槍(かまやり)の技を創始したと伝えられている奈良が発祥の武道です。
 その宝蔵院では、初代胤栄より歴代、稽古始に伝習者へ「狸汁」を供することが伝統として伝えられていました。このことは、幕末の名奈良奉行・川路聖謨(かわじ としあきら)の日記「寧府紀事(ねいふきじ)」嘉永元年(1849)年正月25日の記録によって確認できます。
 宝蔵院流槍術「狸汁」とは、歯ごたえが似ているところから蒟蒻(こんにゃく)を狸肉に見たて、これに大根、ニンジン、ゴボウ、里芋、油揚げを炊き込み、赤・白合せ味噌仕立てにした精進料理のことです。
 伝統の狸汁ではありましたが、明治初年の廃仏毀釈で宝蔵院は取壊され、以来、奈良では槍術稽古とともに途絶えていました。
 宝蔵院流は、当時奈良市長だった私の父故忠三郎が、東京で伝えておられた第18世石田和外先生(元最高裁判所長官・元全日本剣道連盟会長)にお願いし、昭和50年に奈良の剣士達を弟子入りさせ、ようやく発祥の地奈良に再興できたものです。
 そして今回の狸汁は、記録を基に復元考証し、昨年に初めて復活しました。
 前夜に伝習生が集まり仕込作業を行い、さらに当日早朝より大鍋三基にて炊き込み、稽古始を迎えました。
 稽古始には、広く市民の方々に呼びかけお招きして40名による初稽古をご観覧をいただいたのち、道場前駐車場で太鼓の合図とともに炊き上げた大鍋の蓋を開き、観覧者や伝習者に味わっていただきました。準備した200人分の狸汁は瞬く間に鍋底が見え、たいへん好評をいただきました。
 宝蔵院流槍術「狸汁」は冬野菜たっぷりの健康料理でそれぞれの食材が旨みを醸し、さらに胡麻油の香りが食欲をそそり体も温まります。
 この「狸汁会」復活を機に奈良の歴史を思い、当槍術の恒例行事として伝えるとともに、古都奈良・冬のおもてなし料理としての定着・普及をも願っているところです。


月刊「武道2004.3」(発行:日本武道館)掲載




第1回 宝蔵院流槍術「狸汁会」
(03.01.11)

2004.02.28
2004.01.10